Physical Marching Lab

for safety marching band activities

マーチングにも「スポーツ傷害」の概念を

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 みなさんは「スポーツ傷害」というものをご存知でしょうか。捻挫や肉離れなど、一度に強い力が加わることによる生じるものを「スポーツ外傷」、特定の部位に繰り返し力が加わり、軟部組織が損傷するものを「スポーツ障害」と言いますが、これらの総称を「スポーツ傷害」と言います。

 

 マーチングに取り組む中で、体のどこかに痛みを感じたことがある方も多いと思いますが、それらの多くはスポーツ傷害の中の「スポーツ障害」だと考えられます。スポーツ障害は別名「使いすぎ症候群(オーバーユースシンドローム)」と言われ、体を酷使することによって発生します。反復練習の多いマーチングでは、足部や足関節、腰臀部などに負荷がかかり続けることによって疲労がたまり、筋肉や関節など各部位に炎症が起き、オーバーユースに繋がることが考えられます。このことから、マーチングにおける長時間の反復練習は、スポーツ障害に繋がりやすいことが示唆されます。

 

 だからと言って、マーチングにおける反復練習を否定することはできません。楽器演奏に加えて様々な動作を同時にこなすマーチングでは、それらの質を高めるため、どんなに器用な人でも反復練習が必要になります。また、反復練習はマーチングに限らずどんなスポーツでも必要なものであり、より高いレベルを求めている競技者にとっては当然のことでもあります。

 

 そんな中でスポーツ障害を防止するためにまず大切なことは、「ストレッチ」です。近年の研究によって考案されているストレッチは大きく2つに分かれます。ひとつは「スタティックストレッチ」。これは静的ストレッチと呼ばれ、体を静止した状態で行うストレッチを指します。もうひとつは「ダイナミックストレッチ」。こちらは動的ストレッチと呼ばれ、体を動かしながら行うストレッチのことを指します。

 

 スタティックストレッチについては、練習前の柔軟として取り組んでいる人も多いでしょう。しかし最近の先行研究では、「運動前のスタティックストレッチはパフォーマンスを下げる」という報告が数多く見られるようになってきました。静的ストレッチは筋肉の柔軟性を高め、可動域を広げる効果がありますが、筋肉が緩むことによって、ケガに繋がりやすくなることなどが原因として考えられるようです。

 

 練習前のストレッチには、ダイナミックストレッチが推奨されています。ラジオ体操やサッカーでよく行われるブラジル体操などが例としてあげられますが、これらは体を温め、筋肉の活動を活性化させる効果があるため、傷害防止やウォームアップに繋がり、パフォーマンスの向上が期待できます。

 

 そして練習後にはスタティックストレッチをすることが効果的です。先述のように静的ストレッチは筋肉の柔軟性を高めることに加え、筋肉に蓄積した老廃物(疲労物質)を排出し、疲れを溜めないようにする効果もあります。

 練習後は片付けやミーティングなどに時間を割くことが多いと思いますが、体をケアし、コンディションを維持する意味でもストレッチの時間を作ることができると良いのではないでしょうか。

 

 今回はストレッチについて書きましたが、それ以外にも練習のペース配分やマーチングに取り組むにあたっての体づくりなども、傷害を防止するために大切なことです。

 マーチングバンドの世界は、発展を続けているからこそ「スポーツ傷害」に目を向け、より安全にマーチングを楽しみながら継続できるように考えていくことが今後必要になると考えられます。