Physical Marching Lab

for safety marching band activities

運動学的視点から見たマーチングの現状と課題とは

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 まず、運動学的な視点から見たマーチングの課題について考えてみようと思います。

 

   近年、様々な団体のショーを見ていると、特に動作のレベルや質に関して、以前よりもかなり高いものが要求されているように感じます。ドリルデザインやギミック、カラーガードのパフォーマンスなど、年を重ねるごとにそのアイデアは新しい物が生まれ、その難易度も上がっています。

 DCIやWGIなど海外だけではなく、日本国内の各カテゴリーのマーチングにおいても発展が進んでおり、それらのパフォーマンスの質を高めるためには相応の身体的なトレーニングが必要になることが考えられます。

 そんな中で現在、日本のマーチングでは音楽的な知識に比べ、MMやからだ作りなど運動的な面での知識が少なく、多くの団体で様々な問題が生じているように感じます。

 

 例えば、「どんな歩き方(スタイル)がいいのだろう」「どのような筋トレをすれば良いのかわからない」といった疑問をよく耳にします。

 これに対して、「あの団体の歩き方がかっこいいからやってみよう」「あの団体はこんな筋トレをやっているから取り入れてみよう」といった他を真似るケースがよくあると思います。

 真似たり参考にすること自体は問題ではありませんが、「なぜその歩き方で歩くのか」「なぜその筋トレをするのか」といった本質的な部分を置き去りにして真似ているケースがあることが問題です。なぜなら、その本質的な部分が自分たちの団体事情に適していないものであれば、意義の薄いものになる恐れがあるからです。

 

 一方で、MMなどの動作に関する指導が細かくされている団体も多いですが、指導者の経験や感覚、また根性論に頼った指導がなされている場合もあり、学術的に客観性のある知識が用いられていないということも問題点として挙げられます。

 

 これらの問題はなぜ起こるのか。それは、先にも述べたように、マーチングの世界には運動的な知識が不足していることが原因ではないかと考えます。マーチングは音楽的領域から発展したこともあり、動作に関しては指導者が長い年月をかけて経験してきたこと等からトレーニング法が構築され、その方法が伝統的に続いているという側面も、団体によってはあるのではないでしょうか。

 もちろん指導者の経験や感覚は指導に必要なものですが、それだけではなく、学術的な根拠のある方法論に沿った合理的な指導法を取り入れることで、より良い指導になるのではないかと私は考えます。

 

 しかし現在、私がマーチングについて研究を進めている中で様々な先行研究を探しましたが、マーチングに関する先行研究はとても少なく、その中でも実験や分析、結果考察まで行き届いている研究はごく僅かです。マーチングは音楽的要素に加え運動的要素を併せ持つ「複合的分野」であることから、他の競技に比べ研究が困難であることは事実ですし、マーチング自体がまだまだマイナーな競技であることも影響しているでしょう。

 マーチングをより良いものにしたり、より楽しむためにも、マーチングに関する専門的研究が今後進んでいくことが望まれます。

 

 そんな現状から、私は運動学的な視点から様々な研究を行っています。今後このブログではマーチングに関する具体的なテーマをあげ、それぞれの課題の原因追求や解決のための方法について、研究で学んだことを含めて考察していきます。

 研究の中で出た結果の詳細についてはすぐにお伝えできませんが、できる限りの情報を発信できればと思いますので、ぜひ参考にしていただければと思います!